病院での薄毛・AGA治療

「あれ、最近ヤバくない?」、「あなた、大丈夫?」、「お前、相当来てるな!」。周りの無神経な指摘で髪の変化に気づかされる。無神経な言葉で傷つけられることがあります。周りは冗談のつもりでも本人の苦しみは計り知れません。

薄毛に悩む人の中には、ふさぎ込んでしまい、外出ができず、人と交わることができず、うつ状態になる人も少なくありません。

明らかにQOLが下がるのです。

「別に放っておいても死ぬわけではないし・・・」。

そんな周囲の言葉には耳を貸すことはありません。あなたの苦しみを取り除くために薄毛は治療すべき病気なのです。

実際、そういう意見の医師が、AGAクリニックのようなAGA治療の専門病院を中心に増えています。

 

AGAの原因

男性の髪が年々薄くなって言う現象の多くは、男性型脱毛症と呼ばれる症状だと考えられます。いわゆるAGAと呼ばれるものです。最近では様々な治療薬が手に入るようになり、不治の病ではなくなりました。

でも、そもそも、AGAは何が原因で起こるのでしょうか?

AGAは男性型脱毛症を英語に訳したAndrogenetic Alopeciaという言葉の略称です。Androgen+genetic+Alopeciaという3つの言葉から成り立っています。

Androgenというのはアンドロゲン、つまり男性ホルモンの事です。geneticは遺伝的という意味ですね。Alopeciaは脱毛です。

つまり言葉からも類推できる通り、AGAは男性ホルモンと遺伝により生じる症状なのです。

 

遺伝とホルモン

紀元前400年前、アリストテレスが宦官という男性器のない男性には男性型脱毛症の人がいない事を記録しています。

また、1942年にはアメリカのハミルトンという学者が男性ホルモンが男性型脱毛症の発症に密接にかかわっていることを証明しました。例えば、次のようなことを発見しました。

  • 思春期以降にAGAは発症する
  • 睾丸を除去すると発症しないか進行しない
  • テストステロン投与で再び進行する

また、男性ホルモン投与で脱毛の進行した家系には男性型脱毛症の人が多く、男性ホルモン投与でもAGAが現れなかった家系にはAGAの人が少ないことも発見しました。つまり、男性ホルモンだけでなく、遺伝的な要素もAGAに影響を与えると示したのです。

 

AGAと遺伝の関係

男性ホルモンの一種であるテストステロンという男性ホルモンを、強力なジヒドロテストステロンに転換させるII型5α還元酵素の遺伝子が特定タイプの場合AGAが発症しにくくなります。

また、強力な男性ホルモンであるジヒドロテストステロンが結合するアンドロゲン受容体の遺伝子もAGAの発症に関係していると考えられています。

さらに、ヒストン脱アセチル化酵素9もAGAと関係があると知られています。

 

AGAと年齢との関係

1981年に札幌鉄道病院皮膚科の高島巌先生らによる、15才~96歳までの男性1,726人を対象とした調査によると、AGAの発症率は全体で32%。ただ、20代の人で6%であるのに対し、30代になると12%、40代で32%、50代で44%、と年齢が上がるごとにその罹患率が上がっていくことが分かりました。

ちなみに、その23年後の2004年に日本能率協会研究所が行った調査(n=6,509人)でも、同様に、全体で29%で年齢が上がるごとにAGAの比率が増えていきました。

これからわかる通り、年齢を重ねると男性型脱毛症を発症する人が増えていきますが、最近になってその割合が増えているとは言えないようです。

 

AGAの人種間の違い

ハミルトンが行った欧米人の調査によると、欧米人のAGA罹患率は45.6%と日本人よりも10%以上高く出ました。これは、毛の本数は少ないが、毛が太いので目立ちにくいことも関係してるかもしれませんし、遺伝子の際やホルモン状態の違いに起因しているのかもしれません。

 

AGA発症のメカニズム

先ほどAGAの原因に男性ホルモンと遺伝が関係しているという話をしましたが、それでは具体的にどのような働きでAGAが発症するのでしょうか?

 

AGAでは成長期が短くなる

AGAの人出は、髪の毛の成長期が短くなり、平均して2~6年続くはずが、数ヶ月から1年に縮まっています。そのため、髪の毛が十分に太く育たたず、短く柔らかいまま抜けてしまう事になります。硬毛に育つ前に軟毛のまま抜けていくことになるのです。

良く毛周期が止まっている、という言い方をする人がいますが、むしろ、成長期が短くなっているので、高速で回っている、という言い方の方が適切と言えます。

 

男性ホルモンの働きがAGAを引き起こす

毛乳頭細胞の中にある5α還元酵素の働きにより弱い男性ホルモンであるテストステロンが、強力な男性ホルモンであるダイハイドロテストステロン(DHT)というホルモンに変化します。

DHTは細胞内のアンドロゲン受容体と結合します。このDHTとアンドロゲン受容体の結合体が細胞の核に移動し、DNAとさらに結合、結果的に特定のタンパク質の産生を促し、AGAを発症する、とされてます。

ここで重要な働きをするのは、II型の5α還元酵素、次にアンドロゲン受容体、特定のタンパク質。

5α還元酵素は、毛乳頭細胞に存在します。5α還元酵素の中でもⅡ型とされる酵素は、AGA症状で薄くなる、前頭部やひげに特異的に発現するとされています。このことから、Ⅱ型5α還元酵素が男性型脱毛症AGAで重要な働きをしていると考えられています。

アンドロゲン受容体は、男性ホルモンに反応するAGAの前頭部と髭の毛乳頭細胞にたくさん存在することが分かっており、そのことから、AGAとのかかわりが強く示唆されています。

AGAを引き起こす男性ホルモンの作用は、最終的には産生されるたんぱく質によるものです。例えば、TGF-βやDKK-1といった因子が知られています。

 

AGA治療の実際

日本皮膚科学会の男性型脱毛症の治療のガイドラインに載っているAGA治療を紹介します。

フィナステリドによるAGA治療

フィナステリドの作用

前の記事で弱い男性ホルモンであるテストステロンをもっと強力な男性ホルモンであるDHTに変える働きをする酵素に、5α還元酵素があると説明しました。また5α還元酵素にはⅠ型とⅡ型があるとも言いました。

フィナステリドという薬は、日本皮膚科学会のガイドラインでも、強く勧められている薬で、世界中でAGA治療薬として使われていますが、この薬はⅡ型の5α還元酵素の阻害剤です。

基本的にテストステロンとよく似た構造をしていて、5α還元酵素Ⅱ型をテストステロンと競合して取り合う作用を持っています。それによって、AGAの原因物質であるDHTが生まれるのを抑えるのです。

このように、作用が男性ホルモンに関わるものですので、男性ホルモンと関係のない脱毛症には効果がありません。例えば、粃糠性脱毛症や脂漏性脱毛症に使っても効果は期待できません。

 

フィナステリドの使い方と注意

女性は飲んではダメ!

フィナステリドは20歳以上の成人男性における男性型脱毛症の治療(AGA治療)で使うべき薬です。

海外で行われた臨床試験では、閉経後の女性でAGA症状の発現した患者をフィナステリドを服用するグループと、偽薬を服用するグループに分けて、フィナステリドの効果を調べた所、12か月の時点で、効果に差がありませんでした。

この結果から、女性にはフィナステリドは効果がない、とする説が有力になり、添付文書にもそう書かれています。

なお、別の海外の試験では、女性型のAGA=FAGAに効果があったとする臨床試験の結果も報告されていて、議論が分かれていますので試みに使っても良いように思えますが、それでも女性に使われないのは注意を要するからです。

添付文書にも記載がありますが、妊婦や妊娠している可能性のある女性には決して使ってはいけません。もし妊娠中の女性の赤ちゃんが男児の場合、外性器の生育に異常をきたす可能性があるとされています。

そのため、妊娠している可能性のある女性は飲んではいけませんし、授乳中の女性も使ってはダメです。

ということで、先ほどFAGAでポジティブな結果が出ている臨床試験があると言いましたが、それらの試験はみな閉経後の女性を対象としたものです。

 

フィナステリドの服用量

フィナステリドは錠剤で1㎎と0.2mgのものが2種類あります。日本で行われた臨床試験では、0.2mgと1mgとの間に明確な効果の差が見られなかったため2種類用意されています。

しかし、海外での臨床試験では、両方の容量での効果を比較した試験結果を見ると、明確に1㎎の方が効果が高かったことから、日本でも実際は1mgを投与されることが多いです。

 

フィナステリドの効果

日本での臨床試験の結果を見ると、1mg/日を投与されたグループでは、48週飲むと58%の人が「やや改善」以上の効果がありました。また3年間の服用でその割合は、78%まで増えました。ちなみに、この「やや改善」はビフォー・アフターで写真を見比べて改善が確認できるレベルと考えてもらうと分かりやすいと思います。

一般に、目で見て分かるレベルの改善を得るには、6か月のフィナステリドの服用が必要とされていますが、自分でも「抜け毛は減った」などの実感を得るのは早い人で3か月くらいで済むと言われています。

 

フィナステリドの副作用

男性ホルモンに影響を与える薬なので、性機能異常が心配されますが、日本の臨床試験の結果ではきっぱりと否定されています。

実際に、プラセボを飲んだグループとの比較で、フィナステリドを飲んだグループの性機能異常の発現率が高いとは言えなかったという結果が出ています。

ちなみに、フィナステリドの副作用で多いのは、性機能関係のものです。性欲減退が最貧なのですが、これも上のような結果を踏まえると、「思い込み」による心理的な影響が強く出ているのではないかと考えられています。

注意すべきはPSA(血中前立腺特異抗原)が最大で40%減少するとされているところ。元々フィナステリドは前立腺肥大の薬ですので、前立腺機能に影響を与えます。そのため、フィナステリドを服用している間は、前立腺がんの検査で血中PSAを測定したら、値を2倍するようにと指導されるはずです。

 

そのほかのAGA治療

フィナステリド以外にも、日本皮膚科学会のAGA診療ガイドラインには、ミノキシジルも強く推奨される外用薬とされています。

また、自毛植毛という外科的な治療も推奨度は少々下がりますが、提案されています。

 

なお、こうした薄毛・AGA治療をしてくれる病院はどこに行ったらいいのだろう?など、AGAクリニックについてもっと知りたい方はこちらの記事が良く書かれてますので、参考まで。

プロハゲ 薄毛・AGA治療の病院

 

補足:皮脂とAGAの関係

おまけ。皮脂と薄毛を結び付けて語られることが多いですね。美容の分野では特に常識であるかのように語られています。

しかし、医学的にはこれを裏付けるデータは一つもありません。「迷信」です。

と言っても、非常に多くの人に強く信じられている俗説ですので、「ウソだったのか」とはにわかには信じてもらえないかもしれませんね。

そこで、これまで報告されてきた皮脂や頭皮と毛成長の関係についてのデータを紹介します。

 

頭の皮脂を吸い取った試験

1968年のアメリカの試験で、AGAになっていない男性11名の頭皮と、AGAの男性11名の頭皮、両方のグループから、皮脂を吸い取り、その皮脂量を比較したものがあります。

その結果、両グループ間に皮脂の量に差はありませんでした(ちなみに、各11名の年齢や体重など同じような人で試験しています)。

1回目の皮脂量の採取から1時間後に再び、両グループの人の頭皮から皮脂を吸い取り、1時間で産生される皮脂量を測定、比較してみました。

その結果も、両グループ間で差は見られませんでした。

この結果をもって、この試験では、男性型脱毛症(AGA)で頭皮の皮脂量は増えていないと結論付けました。

また、この試験では、AGA患者の毛穴に脂が多い理由として、AGAの毛は細くなっているため、毛が毛穴にある皮脂を吸い上げにくいからではないかと推察しています。

 

このアメリカの調査とは別に、韓国の医師グループがAGA患者の脂腺のサイズが大きい事を証明しましたが、産生する皮脂量には差がないことを導き出しています。

 

ヒトの皮脂の動物網への影響を調べた研究

1950年代にアメリカで、成人男性の皮脂を集めて、5羽のウサギと10匹のマウスに塗り、影響を見ました。さらに、思春期前の子供の皮脂も集めて、3羽のウサギと2匹のモルモット、10匹のマウスに塗りました。

その結果、12日後にすべてのウサギと1匹のマウスの毛が抜けました。

ただ、ほとんどのマウスとモルモットでは脱毛が観察されておらず、動物の種類によって差がありますので、これがどれだけ人間に当てはまるのかは分かりません。

 

過酸化脂質のマウスでの実験ー休止期を早期に誘導

歯磨き粉で有名なライオンは育毛剤も作っていますが、そこで行われた試験で皮脂と毛成長との関係に関する興味深い結果が出ています。

マウスの皮膚にに過酸化脂質の一種を塗り、塗った箇所の毛のヘアサイクルに影響があるか調べました。

結果は「あり」。過酸化脂質を塗ったマウスのヘアサイクルでは、休止期の毛の割合が、過酸化脂質を塗っていないマウスより高く出ました。このことから、過酸化脂質はヘアサイクルで成長期にある毛髪を休止期に誘因する作用があると結論付けられました。

この過酸化脂質は頭皮の皮脂に紫外線が当たることで生成されると考えられています。しかし、ヒトの頭皮の脂質であるスクアレンについて調べた結果、日光で過酸化されるのは1%にも満たないという結果が出ました。

実際の頭皮でどのようなことが起こるのかはさらなる調査が必要です。

 

脂漏性皮膚炎

今まで、データで皮脂と毛成長との関係に否定的なことを話してきましたが、唯一関係が明確なものがあります。それは、脂漏性皮膚炎です。この症状のある人は脱毛を引き起こすことがあります。

 

毛髪のための頭皮ケアとは?

美容の世界では頭皮ケアは人気がありますが、医学の世界ではあまり研究されていません。最近の海外の研究では、頭皮の機能や構造は加齢によって大きな変化がなかったそうですので、頭皮と毛成長に密接な関係を求めるのはムリ筋な気もします。

しかし、頭皮に激しい接触性皮膚炎が起きた場合、数か月後に毛周期が休止期に急速に移行することがあります。先ほどの脂漏性皮膚炎と考え合わせると、特殊な疾患かもしれませんが、こうした疾患にかからないように頭皮を日頃から清潔に、健康に保つことには意味があるかもしれませんね。

 

以上のように、皮脂とAGAは関係は立証されていません。皮脂と関係のある薄毛もありますが、その場合は病的な症状である可能性があります。

ですので、いずれにせよ、薄毛治療のために、AGA病院に行くしかありません。

AGA治療には、AGA病院、AGAクリニック。強くおすすめしたいですね。

 

参考資料

「薄毛の科学」乾重樹〔ほか〕著  /  日刊工業新聞社